例会報告

第599回10月大会

 
日 時 : 平成20年10月7日(火)
場 所 : 京都全日空ホテル
講 師 : 畑本 久仁枝  (経済人クラブ 代表世話人)
テーマ : 「経済人クラブから学んだ事 〜キャリア30年の交渉術と秘話、お話します〜」 
 


●東国原知事への講演依頼のエピソード

まずは県庁の電話番号を調べることから始まります。しかし、講演会は公務ではなく政務なので後援会事務所に電話を掛けなおすことになりました。秘書の方からも、「おそらく無理ですよ…」と後援会事務所に電話を掛ける前に言われてしまうほど、その頃、知事は超多忙な方でした。担当者の方は親切な応対をして頂いたものの、状況は厳しいものでした。依頼はファックスか郵送で送ることになりますが、ファックスではなく宅急便で依頼書とプロモーションビデオを送ります。
その後、一週間でまさかの内定(内諾)をいただけることになるのです。

●このエピソードの中に潜む、交渉テクニックとは?

◇キーポイントは「誰と交渉をするか」です。
「将を射んとすれば、馬を射よ」という言葉のように、「馬にあたる人は誰か、大将が命を預けるほどの信頼関係にある人」を知ることは非常に重要です。知事の政務を司る方と交渉を進める事が成功への近道早道になります。そして、その方と少しでも事務的な関係を親しみの方向へ近づけていく努力と工夫をしていきます。

◇依頼書を何故宅急便で送るのか?
宅急便は時間指定ができるので、依頼書到着がこちらで把握できる上、確認の電話をするタイミングが計れるからです。確認の電話を入れた時、電話に出た方(事務所の方)お名前は覚えておくようにします。
最終的に担当者の方に検討のお願いが出来るまで電話は入れます。一日に何回か電話をすることで、事務所の方には印象深くなりますし、自然と親しみの度合いが増していき距離感が縮まります。宮崎と京都の実際の距離を縮めることは出来ませんが、心の距離感は縮めることが出来ます。この事は非常に重要です。また、依頼書の中身も、単なる講演条件だけではなく「なぜ、お招きしたいのか」自分の熱い想いを伝える為、よく推敲した文章で添えることにしています。

ほんの少しの努力や工夫が「経済人クラブの畑本さんの依頼は何か違う」と思わせたのでしょうか、交渉を上手く進め結果を早く導き出せてのかも知れません。

●簡単に諦めない

何回も断られる場合もあります。無愛想な態度をとられることもあります。しかし、断られて当たり前という気持ちで依頼を続けます。そのとき、依頼の電話をかける間隔は3ヵ月半から4ヶ月にします。これは相手に忘れられもせず、鬱陶しく思われることのないためです。忘れられる直前のタイミングを狙うのです。また、忙しくない時間を推測してかけるようにも心がけています。政治家の先生などには特に、忙しい午前中は避けて電話をかけないと迷惑がられます。そのようにしていくうちに、2年、3年越しに交渉が実ります。

●大屋政子さんとの出会い

交渉術を極めていくきっかけとなったのが、25歳の時、大屋政子さんとの出会いです。自分の受け継いだ経済人クラブを起死回生させるために、誰の紹介もなく、たった一人で大屋さんに講師依頼に行きました。大屋さんはその勇気に感動して講師依頼を引き受けてくださいました。しかし、当時の経済人クラブの財政状況を考えると、講演料を値切りに行かざるをえなく、再び大屋さんのもとを訪ねましたが、この事が逆に大屋さんの逆鱗に触れてしまい、交渉決裂の危機に陥ります。そこで、「私には経済人クラブを立てなおす使命があり、一回や二回断られたくらいでは帰れません・・・交渉に応じていただけるまではここから動きません!」と、大屋さんの懐の中に飛び込んでいく事で交渉を成功させたのです。大屋政子さんとの出会いがなければ、今日まで経済人クラブ存続は無かったと思います。


○感想

最後に私の感想を述べさせていただきます。多忙な方に講演依頼をするに必要なのは熱意だけではないと、強く感じました。畑本さんの交渉術には熱意と、交渉相手に対する気遣いが感じられ、交渉のテクニックとは気遣いの延長線上にあるものだと感じました。「自分が相手の立場だったらどう考えるか…といつも考える」と言っていたのが印象的で、私も真似をしていきたいと思いました。勉強になることばかりで、貴重な時間となりました。

 


【レポート:京都大学2回生 菅原聡子】
 


【第599回定例会御礼】

先日は皆様にご無理を申し、第599回講師を務めさせて頂きまして心から感謝申し上げます。
お蔭さまで沢山のご参会者で会場も満員御礼状態になり嬉しく思います。
ただ、よく存じ上げている方ばかりの前でお話するのは、妙な緊張感と気恥ずかしさが生まれるものだと実感いたしました。
29年前、私が始めて交渉した大屋政子さんとのやり取りは臨場感があって良かったと、感想を沢山の方から頂きました。
その頃の私をご存知なのは荒木泰子さんだけです。懇親会では亡きご主人康樹氏のことを思い出して最後は涙・涙のご挨拶になってしまいましたが・・・。

次回は「バカやろぅ〜!」と、怒鳴られて始まった田中角栄元総理の秘書であった早坂茂三氏との秘話なんかもお話させて頂ければと思いますので、機会があれば又講師にお招き頂けることを願っております。
本当に有難うございました。
畑本 久仁枝拝