【国富論を超えて】
エコノミストでもあり、同志社大学大学院ビジネス研究科教授・同研究科長の浜矩子先生をお迎えして行われた第 10 回政経・文化サロン。冒頭で、現代の私たちには「明日からの挑戦状」が叩きつけられてるとおっしゃる。一つの地球と多数の国々という相克、これが様々な問題の原因となっている。以下、3つの問題点を挙げられ、そしてこれにどう答えていくのか、どう乗り越えていくのか、解決策を示唆いただいた。
1 つ目の問題点は「政策破綻」である。ギリシャの国債格付けが下がり、国家破綻が現実となりつつある現代、本来経済活動のショックを緩和させる財政の役割が果たされていない。なぜか。人・モノ・カネは国境を越えられるが、国は国境を越えられないからである。つまり、財政が国を越えられないところに現在のグローバル経済の難しさと限界がある。
2 つ目は「国々の逆襲」である。 1 つ目の問題点を解決するためには、人・モノ・カネが国境を越えなければ良い、ということになる。金融も今のままでは国境を越えて漏えいする。
なので、たとえばいくら新興国がインフレを止めようと思って金融政策をとっても、国内のみで回っているわけではないので思うようにいかない。そしてそれは鎖国の誘惑となる。 TPP も、自分たちの都合に切り刻む行為であり、結局はひきこもりと排除の論理である。貿易の自由化を推進しようとして、逆に貿易の不自由化を招いている。
3 つ目は「通貨激変」である。 1 ドル 50 円の時代が、すぐそこまで来ている現在、地域経済のバランスがとれていない。日本はいつまで、円単一通貨でいられるのか。地域格差もあり、中央で富の再分配装置も機能していないのでそう長くは持たない、というのが浜先生の見解である。
以上のような「挑戦」に、対し、先生は独自の言い回しで切り込む。「国富論を越えて、僕富論から君富論へ」つまり、自分さえよければ良いという発想ではなく、自分の手元のビールがなくなったら、まず相手のビールを注ごう、ということである。それは国と国でも、人と人でも同じである。経済活動とは、もっとも人間らしく、人間たらしめるものであり、また「まさか」は必ず起こるのである。その時に、「情けは人のためならず」で動けるか。
日本は豊かさを分かち合うのが実に下手な国だ、と先生は言う。
これからの時代には多様性、包摂性をいかに高めるかが勝負。
経済人クラブ宛てにいただいた色紙には、こう書いてあった。
「ひとりはみんなのため みんなはひとりのため それがグローバル世界を作るんだ」
この一言に、全てがある。
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