「私先月末京都府警をクビになりしましてね。現在は Y 組の顧問をしております。今日はお金集めに来たつもりです。皆さん、是非今日持ってきた麻薬を買って帰ってくださいね」。
このような出だしで講演の幕が開けた。まだ会場は上原氏の言葉が冗談なのか本気なのか分からない。
「こんな感じで皆さん、暴力団に脅かされたり騙されたりして、泣き寝入りしてますよね。今日は、そんなときに少しでも役立つ、とっておきの対策をお話したいと思います」。
この言葉で会場の空気は変わり、一気に安堵感と笑顔に包まれた。
講演というのは、最初の「つかみ」、そして、「テンポ」がとても重要である。そういう意味で、今日の会場は、早くもこのインパクトのある「つかみ」で、すっかり上原氏のテンポに乗っけられた。「今日はなんだか面白い話が聞けそうだ」――こんな思いが会場に立ち込めたと思ったのも私だけでないだろう。
しかし、よくよく考えてみればそれもそのはず、実はこの上原氏は、 1992 年の暴力団対策基本法の制定以降、様々な講演にひっぱりだこの身なのである。講演先は、洋の東西を問わず、東奔西走、またその対象も、警察庁・地方自治・民間企業 etc ・・・など守備範囲は実に幅広い。聞くところによれば刑務所にまで足を運び講演をしたことがあるという。
余計なお世話だと思うが、この「技」を持ってすれば、冒頭の冗談がいつ冗談でなくなっても困らないのではないだろうか(笑)。
閑話休題(それはさておき)。今日の話のキーワードは2つあった。「青のパトカー」「暴力団対応」である。ちなみに、上原氏のお話は、テンポが良いだけでなく、話題の端々に「笑」のエッセンスがちりばめられている。これも「私は日本発とか京都発というのが好きなんです」という上原氏なりのプライドがなす技なのであろう。
それでは、前置きが長くなったが、以下、話の要旨を簡単にプレイバックしてみたい。
青のパトカー
「アメリカのパトカーのサイレンって何色ですか?」
答えは、当然「赤」ではない。「青」である。なぜか。
「青には人の気持ちを抑えさせたり、冷静にさせたりする効果があるんです」
言われて見れば確かにそんな気がする。自転車の駐輪場など街の中で、やたらと最近「青」の電灯を見ることが増えた。何でも、上原氏の提言によって、現在、新名神高速道路(スピード違反防止)や大阪の百貨店のイルミネーション(ひったくり禁止)、また、家の泥棒対策用の電灯など、私たちの生活のあらゆる面に、次々と「青」の導入が進められているとか。
また、これは余談になるが、上原氏はプライベートでも、この「青」がどれだけ効くか試されたという。その結果、青色の電灯のもとで、食欲もなくなるということが分かった。メタボ注意報や警報が鳴っている人にとってこれは1つの朗報なのかもしれない(笑)。ぜひ明日から試されたい。上原氏は続ける。
「日本のパトカーも全部青色のサイレンにしたら良いんです」
現在舞鶴市や亀岡市で実施(検討)中のようだが、上原氏のアジテートにより、日本中のパトカーのサイレンが青くなる日もそう遠くないのかもしれない。
「坊」主団と「暴」力団
「私は坊さんに説教したことで有名になったんです」
事の経緯はこうだ。今から3年前、比叡山延暦寺に対して、指定暴力団である 口組から歴代組長の法要式典のために法要の中では最高級とされる「特別永代回向」の要請があった。
この情報を事前に察知した滋賀県警察は「組織の権力誇示と香典名目の資金集めに利用される」として法要の中止を要請。しかし、延暦寺はこれを「単なる宗教の行事」として拒否、 2006 年 4 月 21 日 、延暦寺内阿弥陀堂において、この行事は予定通り実施された。ところが事の顛末としては、後日、延暦寺はマスコミに対し急遽「次からは暴力団の法要は拒否したい」とのコメントを発表するが、覆水は盆に返らず。世論の批判を避けられず、翌月、幹部全員が責任を取って総辞職をした。
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