■本物へのこだわり
「最近嬉しいことがありまして、私の鳴き真似は科学的にも本物に近いと証明されたのです」
何でも日本音響研究所が測定したところによると、本物の動物以上に本物らしいの“揺らぎ”の波長が確認され、あるテレビ番組では、本物にも勝ったという。ここまでくれば、お笑いの域を超え、ただただ「あっぱれ」である。
しかし、これも小猫氏の話をじっくり1時間聞けば合点が行く。というのも、小猫氏は「本物の鳴き声」に会うためなら、北半球であれ南半球であれ、洋の東西を飛ばず、とにかく「現地・現場・現物」に会いに行っているのである。これこそがプロ魂、本物を越えるための唯一最大の秘訣であろう。インターネットが普及し、便利な時代になったとは言え、やはり、大事な情報、本物はネット上には落ちていない。つまり、小猫氏の技とは、自ら足を運び、自らの五感で吸収してきた故に得られた当然の賜物なのである。近道なんてない――この芸や技への姿勢こそが、まさに「守」そのものであり、またその「守」のための「破」なのであろう。そして、この本物へのこだわりは、単に「本物の動物」への挑戦というだけでなく、もしかしたら、祖父から続く先代、つまり、「伝統」への挑戦でもあるかもしれない。
■おわりに
現在のところ、まだ京都での公演は決まっていないものの、この 10 月から小猫氏は、北は北海道から、南は沖縄まで、日本縦断の襲名ツアーに出るという。 最近の言葉で言えば、“アラカン(アラウンド還暦)”の年で、満を持して「江戸家猫八」を襲名する小猫氏。しかし、襲名後も、きっと小猫氏の「伝統への挑戦」は続くだろう。
「猫」の手をお借りした経済人クラブとしても、次なる江戸や猫八に「鉢」ならぬ「バトン」が渡る日まで、今後とも、小猫氏の「八」面六臂の活躍を祈念する限りである。
最後になるが、今回の小猫氏のプロフェッショナリズムを間近で見させていただき、思わず思い出した詩を紹介し、これを私の感想に変え、結びとしたい。
「青春とは人生のある時期をいうのではなく心のもち方である」(サミュエル・ウルマン)
≪文責:すぎおか ひでのり≫
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