例会報告
一色 正春 氏

第614回定例会

日 時 : 平成23年10月25日(火)
場 所 : ブライトンホテル京都ウィンザーの間
講 師 : 一色 正春 氏
第1部 講演 テーマ:「あれから一年。海の上から見えた日本の外交〜sengoku38のメッセージとは?〜」
第2部 対談 インタビュアー:杉岡 秀紀(事務局長/同志社大学政策学部講師)


衝突映像から見える真実とは?

  始まりは大音量のサイレンが部屋中に鳴り響き、某インターネットサイトで話題になった映像が流れた。そう、昨年の 11 月 4 日世界に公開された中国による日本の巡視船への衝突映像である。あの映像から約一年が経過する時、私たちは何を知り、何を考え、どう行動することができたのかを一色さんの解説とともに振り返ろうと思う。

  衝突映像が撮られた前提として、当時は領海に違反している中国漁船が 30 隻と領海違反外で運転している中国漁船が 150 隻あり、合計 180 隻の中国漁船に対して、かたや日本側の巡視船は 4 隻で対応していたことが挙げられる。そして、今までの日本の対応に沿って行なうと、中国漁船に領海内からの立ち去りを促し監視することであったが、この時は異なる展開を迎えてしまった。
  上記のように、この映像では、中国漁船による違法操業の日常化と、そして、現場でこれまでの状況から危機を予測できたことが前提として隠されている。それを私たちは自らで気づけたであろうか。多くの日本国民が一隻の中国漁船と巡視船との出来事でしか見られていないと考える。


中国漁船衝突事件の不透明な点と問題点

■不透明な点 ■
|羚餤船の船長の計算された体当たりだったのか
映像を撮る巡視船側の乗組員の状況が穏やかであることから、ぶつかると気付いた可能性

■問題点■
‘本の事件処理方法
⊂攀鬚鯆鷦┐靴覆て本

 不当面な点に関してはすでに事件が迷宮入りしているので本当か嘘かは不明である。一方、問題点はこれからの日本の対応を軌道修正するためにも分析する必要がある。

  問題点,肋彳融態の制圧から船長逮捕まで 13 時間がかかり、またその間謎の空白時間を生んだことになっている。一色氏の推測によると、この空白時間は処罰を管轄する警察が過去にこのかたちで中国人を捕まえたことがないため、悩んだ末に発生した時間であるとする。問題は領海の侵害ではなく、公務執行妨害という本来の 1/8 の刑の軽さで対応した点である。さらに、那覇地検が中国人船長の釈放を認めたことがさらに日本の対応のまずさを物語る。釈放理由に逃げ惑う際に当たってしまった船長の証言と、再発の恐れがないとする地検の見解の二点であった。この時、映像を見ていないため、はっきりおかしいという人は現れず抑止できなかった。

  問題点△脇本が映像という証拠を世界中に提示しないために、中国の強気な対日対応を引き起こすことだ。当時中国は、福建省の貧しい漁民が尖閣諸島沖で操業している際に日本の巡視船が体当たりを行ない、船長ごと船をさらっていったと正式発表している。第三者の国から見ると、証拠を提示しない日本に非があると解釈されかねない。現に、アメリカのニューヨークタイムズには日本の非を明記し、それを読んだ多くの人がやはり日本が悪いと信じてしまっていると考えられる。


現状までの影響・これからの影響

日本が持っている証拠を提示しないまま、中国の無茶な押しつけと世界からの間違った認識で、結果的に日本の国益が損をしている事態を引き起こしてしまった。

■今までの影響■
・海: 今年 8 月 4 日の中国の漁業監視船の領海内出入り
・空: 航空自衛隊の緊急発進が昨年の 3 倍に増加

■これから■
・中国: 空母の設備、軍事費増強
・日本: 軍事機材の老朽化、軍事費削減

中国が着々と軍事面で準備しているなか、日本が本気になれば、中国は戦う意志を感じられる。この意志がある以上、私たち日本の空と海が危険にさらされていることに変わりはない。


真実が正確に伝わるという難しさ

 この事件を見てとれるように、映像が出るか出ないことでこれほど事件の解釈が異なる方向へ進んでしまう。中国への配慮からなのか、日本の証拠という情報開示は行なわれず、一色氏が日本の状況に憂慮し、先の行動を移すに至るのであった。あの映像が世に出ていなければ、それこそ日本国民そして世界が中国の思惑に陥っていたであろう。
  この時私は、貧困から脱し、農業でビジネスができるまでに遂げたアフリカ人のインタビューを以前見たことを思い出した。この人は「無知というのがいかに恐ろしいのか。身を持って体験した。」と話していたのが印象的であった。これと同じく、私たち国民は政府の証拠映像公開拒否により無知になりかけたのである。


一色氏のメッセージ

 一色氏は講演を通して、「正しいことを知り、正しい判断を自らで行なう」ことを伝えたかったのであろう。日本のことなかれ主義にとどまらず、自分がしなければという破壊力、そして、映像さえ世に出れば世の中の誰しもが日本の立場を理解してくれるという愛国心の二つを一色氏から国民一人ひとりが学ぶべきことである。
  大量の情報が混雑する現代社会で、正しい情報を見分ける力=審美眼、情報リテラシーを養うことが私たちに求められることだ。私たち一人ずつ真理を追求する意識をもつことが、重い腰の政治家や受け手に都合のよい記事しか載せないマスコミを突き動かすことが可能となる。


おわりに

 この講演で聞かなければ知らなかったことがある。結果を求めずに行動した一色氏から学ぶように、自分の思うことを一貫して持つことが日本の明日の国力となるだろう。
  また、情報が多ければ多いほど、自分で好きなものだけを選択し、あとは気にも留めない行動が私たち 20 〜 10 代のパソコン・携帯世代で多く見られると気付いた。これに少し違和感があるので、地道に議論の輪を広げていきたいと思う。地道さが民主主義の“売り”と思って。


≪文責:にえかわ あき≫