例会報告
佐藤 正久氏

【第574回9月大会】

 
日 時 : 平成17年9月1日(木)
場 所 : 京都ブライトンホテル
講 師 : 佐藤 正久氏 一等陸佐
      (第七普通科連隊長(23代)兼福知山駐屯地指令(25代))
テーマ : 「イラクに赴いて想う」












第574回9月大会は一等陸佐の佐藤正久氏を迎え京都ブライトンホテルで開催されました。

<講師講演>

■イラク復興支援・サマーワ
本日は、私がイラク復興支援先遣隊として如何にして基礎を築いたのか、そしてそこで大切にしたことを中心にお話したいと思います。まず、イラクと日本の位置関係からお話します。イラクの緯度はほぼ日本と同じ位置にあります。しかし、外気温は高い時には64℃にもなり、毎年3月には砂嵐でほとんど前が見えない状況になります。サマーワは15万人ほどの地方都市で、貧富の差は激しく銃が社会に浸透しています。男性は部族や自己の名誉を大変重んじます。また、イラク人は温情に厚く自衛隊の支援を受けた人からは果物や野菜の差し入れを頂いて、宿営テントの中は一時、差し入れのスイカで溢れたほどです。この点は非常に日本と似た民族性も垣間見えると思います。

■現場を見て方針を決める〜「虫の目」と「鳥の目」〜
私は日本を立つ前に具体的な活動方針は決めませんでした。それはイラク人にとって本当の支援活動を行う為には、私達が勝手に考えるのではなく現場の声を聞く必要があると考えたからです。イラクに入って最初の気付きはイラク人の能力の高さでした。しかし、長年の統制で行政組織が弱い為、復興の計画が立てられないという問題を抱えていました。ここで初めて、「イラク人が主役となり自衛隊は復興の計画を立てる等、いわば黒子役に当たり、彼らが自立するための支援活動を行う」という方針が出来たのです。現場を見る「虫の目」と長期・全体の見通しをつける「鳥の目」。この二つの視点を持つことが重要だと思います。

■郷に入っては郷に従え〜信頼を築く〜
「郷に入っては郷に従え」これが、私がイラクに赴くにあたり大切にした言葉です。そこで重用なのが「信頼関係」です。いくら良い計画もイラク人と自衛隊、双方の信頼関係が無ければ実行できません。信頼と安全は自ら創るものです。部族長との話し合いの場で勧められる食事はいくら体調が優れず、口に合わない料理でも笑顔で全て食べきりました。現在、自衛隊が宿営している土地を借りる交渉でも誠心誠意、私達の「情」を語ることで結局は相場より安い価格で交渉が成立しました。まさに信頼関係がなせる業といえるでしょう。

■自衛隊は第1走者〜イラクの平和を目指して〜
サマーワでは、まだ治安の問題等、民間団体が支援を行うには厳しい現状であることは確かです。自衛隊はイラク復興の第1走者として復興計画を実行すると共に、サマーワの部族・住民との信頼・安全の関係を築く活動をしています。今後、民間企業やNGOが現地で安全・円滑に支援を行うための土台作りを自衛隊が担っているのです。
最後に私が一番伝えたいことは、イラク人も日本人も同じく幸せを求める人間であるということです。イラクと日本が共に平和になっていくことを願っています。


"感動をありがとう"自衛隊に最敬礼!
by 畑本久仁枝

 自衛隊に対しては好意的であると自負いたしておりましたが、佐藤隊長のお話に改めて最敬礼の思いです。

第574回9月大会にお招きした自衛隊一等陸佐:佐藤正久氏のご講演は、テレビや新聞では分からない、復興業務の活動・苦労や現地の様子が伝わってきます。
講演会終了後、メンバーからは「税金が無駄に使われるのは腹立たしいが、自衛隊の支援活動に、税金を納める意義を改めて感じた。」「自衛隊の素晴らしい活躍・活動・精神を一人でも多くの人に伝えたくなる」などの声が寄せられ、参加した人の心に熱い想いを喚起させるものがあります。
私自身、あれほどの感動を憶えたのは今までに何回あったかと思うほど、心の底から熱くなるものが込上げて来ました。
"感動をありがとう"の意味を、身をもって味わえたと言うか、体感できたのです。素晴らしい感動は心を熱くし、たとえ熱さが冷めても、心の中に清々しさと満ち足りた気分が漂います。
そして、何よりも自衛隊の活躍と存在に、日本人であることの誇りを感じました。
 日本の一部の人達の中には、自衛隊に対しての偏向・偏見をお持ちの方もありますが、そのような人達にこそ、是非、聞いてもらいたいお話です。
 今回の「自衛隊イラク派遣」の是非を論じる前に、日本人として「自衛隊の真の活躍・活動・姿」を先ずは「知る・理解」しようとする姿勢を持つことが必要ではないかと思います。
 報道カメラマン・宮嶋茂樹氏の写真集に「渋谷でガキが遊び呆ける間に、政治家が安心して料亭通いができるよう、誰かがやらなければならない・・・」このキャプションが付けられた写真は、陸上自衛隊・レンジャー訓練中の隊員の姿を撮らえたものです。飲まず・食わずの不眠不臥、その上、重い武器を担いで過酷な訓練に耐える隊員の姿に、思わず胸が熱くなったことがあります。
有事に備え、日夜厳しい訓練に励んでおられる自衛隊員の皆様に、心から敬意を表したいと思います。
 佐藤隊長、素晴らしいお話を本当にありがとうございました。