例会報告
中野 雅至氏

第618回定例会

日 時 : 平成24年10月25日(木)
場 所 : 京都ブライトンホテル ウィンザーの間
講 師 : 中野 雅至氏(兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科教授/元厚生労働省官僚)
テーマ : 「財務省支配とこれからの日本」


【財務省の復活】

かつての大蔵省は、予算・税・金融の 3 つを握り、さらに財官界と強いコネを持つ、影響力の非常に強い役所であった。しかしその後、一部が金融庁に分離され、また相次ぐ不祥事もあって、没落の一途を辿ることになった。加えて「大蔵省」という名称も、「財務省」と変わり、それまでの威厳を失ってしまった。

だがそんな財務省も、とあるきっかけで復活する。そのきっかけとは、民主党政権の誕生である。民主党政権では、人材がいなくなったことで、官僚の力が強まった。また役人が、気に入らない大臣に対して、「ヘトヘト作戦」や「自爆テロ」と呼ばれる抵抗を続けることで、大臣が見えない力に作用され、官僚の指示に従ってしまうなど、所謂「政治主導」の失敗がきっかけとなっている。また財政難に陥っていることも、財務省の復活に貢献している。


【財務省の力の象徴】

かくして復活を遂げた財務省の力の中に、税務調査がある。政治資金などを少しでも改ざんすれば、財務省には逆らえないというものだ。また政治家に介入されない規則正しい人事が行われるため、政治からの独立性が高いということも、力の象徴とされる。

現総理大臣( 2012 年 10 月定例会当時)である野田佳彦氏は、財務副大臣・財務大臣を経験しており、財務省的思考回路が出来上がっていることも、財務省の力が伸びてきた原因の一つとされる。


【これからの財務省】

財務省は、これからも力を持ち続けると考えられる。根拠としては、①格差社会から衰退社会への移行、②パイが少ないためコンセンサスが築けない社会、③不安定な政治状況、④「小さな政府」への疑い、⑤「市場・競争力」から「政府・国力」の時代への移行が挙げられる。


【講演を聞いて・・・】

中野先生のことは以前からテレビで拝見していたが、実際に会ってお話を聞いてみると、テレビで見る以上に「話し出すと止まらない」方であった。約 50 分間ノンストップでお話され、その中には、財務省の過去・現在、元官僚だから分かるような省庁の裏話など、目からウロコのものも多かった。

社会保障や増税に関するお話の中で、社会保障を拡大するなら増税は必須であり、税を少なくするなら社会保障は縮小せざるを得ない、と言うご指摘があった。これには考えさせられるものがある。これから高齢者人口の割合が増加していく中で、安定財源とされる消費税と、年金や医療費の個人負担分のバランスは、政治家・官僚だけでなく国民一人ひとりが意識しなければならないと感じた。

私は今回初めて、経済人クラブの定例会に学生スタッフとして参加させていただいた。参加者の中で、一番年下で緊張したが、得る物・学んだことも多く、たいへん刺激を受けた。中野雅至先生をはじめ、お世話になった全ての方々に感謝の意を表し、以って結びとさせていただく。

≪文責:京都府立大学公共政策学部 尾崎 巧馬≫