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第572回6月大会は「WiLL」編集長の花田紀凱氏を迎え京都全日空ホテルで開催されました。
<講師講演>
■出版業界と雑誌と私
一年間に国内で出版される書籍数をご存知ですか。実に7万2000点が発行されています。不況と言われる出版業界は市場規模も決して大きなものではありません。その中で私が編集長を務める雑誌「月間WILL」は7月号で9万部と売上数を順調に伸ばしています。本日は、40年間雑誌に関わってきた経験を元に、雑誌と新聞の違い、雑誌の役割とは何かをお話をさせて頂きます。
■雑誌と新聞の違い
よく雑誌と比較される対象に新聞があります。新聞と雑誌を比べて新聞の弱みを3つ挙げるならば、まず、取材力が落ちている点です。新聞記事の80〜90%が発表物の記事になっているのが現状です。2点目は宗教問題や政治問題など金銭・政治的利害関係がある記事には一般論しか掲載できないと言う事です。最後にオピニオンが出せない点。新聞は規模が大きく取材不足もあり、社説などでは意見というよりも一般的な解説になる傾向が強いです。
一方、雑誌ではオピニオンは出せますが、編集長の意向次第という危うさも持っています。また、雑誌は新聞と違い店頭で勝って頂くものです。その為、消費者ニーズを追い求める傾向があります。結果的にスキャンダルやセンセーショナルな広告タイトルになりがちでもあります。
■質疑応答
Q:インターネット社会の今後は?
A:インターネット上には、それは数え切れない情報があります。編集者の役割とは何か。それは、必要な情報を必要な人に届ける事です。つまり、情報が無数にある中で取捨選択をする「編集」が今後より重要になっていくという事です。いろんな形で編集は出来る訳ですし、今後は大きな出版社より、小回りが利く企画力ある少数の出版社が有利になるではないかと思います。
Q:編集者の年収はいくらですか?
A:結論から言えば、大きな出版社では普通のサラリーマンよりも高いですよ。ただ、私が40年も雑誌に関わってきた理由はお金じゃありません。雑誌編集には給料よりも面白い事がたくさんあるからです。この面白さを若い人にも伝えたくて学校もやっているんですよ。
■多角的視点から自分の意見を
雑誌は新聞と違い、多角的な視点を社会に提供する事が特徴です。さらに、他メディアを批判する事も重要な役割のひとつです。影像メディアであるテレビや寡占状態の新聞では報道されない情報がたくさんあります。特定の情報に紛らわされる事無く、あらゆるメディアに目を通して自分で判断を下して頂きたいものです。そのひとつの材料として雑誌を活用して頂けたら幸いです。
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